コピーライト無視

ロイヤルオペラハウスでマーク・エルダー指揮アルファーノ作曲の「シラノ・ド・ベルジュラック」。この(オペラに結構詳しい人でも)殆ど知られていないオペラ、ニューヨークのMETとロイヤルオペラで上演するきっかけになったのは、ご存じプラシド・ドミンゴである。この人の持ち込み企画で、もちろん主役のシラノを歌うわけである。
誰もが同じ感想だと思うけど、ドミンゴに尽きるね(歌唱だけ取ったら、この↑ソプラノも出色だったけど)。今年の初めに体調を崩して3ヶ月ほど予定されていた公演を全て休んだらしくて、プログラムの写真や去年「ヴァルキューレ」で観たときの印象からすると随分痩せたみたいだったけど、声の方は好調。全盛期の録音と比べると声が硬質になり、当然ながら声量自体も大きくないのだけど、やっぱりこの人じゃなくちゃ、という声である。まー、最近ワーグナーの録音もドミンゴテノールで聴くことが多くて、生で聴けるというだけでかなり感慨深いものがあるんだが。
オペラの「シラノ」が何であまり知られてないのかというと、それは「音楽が大して良くないから」と言われていて、その評判通り確かに劇的な要素が極めて弱いし、音楽的なオリジナリティも無い。特に、2日前に「フィデリオ」を聴いたから、音楽的な物足りなさは歴然。
ただ、全体として「演劇」としての要素が強い(そこは「フィデリオ」と全く逆である)ので、シラノ役の演技力と存在感があれば、そこは映える。んでドミンゴであるからして、やっぱり感動させられたよ。
最近耳が肥えてきた嫁は「ドミンゴがなんぼのもんじゃい。名前だけじゃないのか?」と疑ってかかっていたらしいが、「やっぱり奴は凄い」という結論に落ち着く。
来シーズンはロイヤルオペラの出演は無く、僕は再来年以降はどこにいるか不明なので、ドミンゴを生で聴くのはこれで最後かも知らん(日本公演って言ってもまさかNHKホールにべらぼうな値段を払って聴きにいく気はしないし)。まあ、2回でもちゃんとオペラハウスで聴く機会があって幸運か。多分、まだ20代である僕らが、生ドミンゴを聴く「最後の世代」になるだろうしね。