バービカンで、マキシム・ヴェンゲーロフ(ヴァイオリン)のリサイタル。それにしてもこの人はロンドンでの人気が高い。
前半はモーツァルトのロンドの編曲に、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第7番。モーツァルトは軽い小品だからいいけど、ベートーヴェンは全然物足りない。まあ、もともと分かりやすい第5番の「春」とか第9番の「クロイツェル」に比べればメロディアスでないだけに格段に難しいんだろうけど「各部分は完璧でも、全体として繋がらない」という典型的な演奏。なんというか、4楽章全体というだけでなく、各楽章もまとまって見えてこないんだよね。恐らく世界一の超絶技巧ヴァイオリニストとしてならすヴェンゲーロフも、この辺は進歩の余地がまだまだあるのかも知らん。
後半は、プロコフィエフのヴァイオリンソナタ第1番と、ショスタコーヴィチのピアノ前奏曲をヴァイオリン用に編曲したもの。この辺はヴェンゲーロフの真骨頂。やっぱりロシアものは強い。圧倒的なテクニックを見せつける側面と、曲としての深みを出す、というのが見事に両立する。なんでだろう、古典的なソナタ形式で、特にキャッチーなメロディーが無い、全4楽章で30分弱、と言う点ではベートーヴェンの7番もプロコフィエフの1番も共通してるんだが、こうも説得力が違うものか、と思う。
ただ、プロコフィエフのピアノの伴奏が大いに不満。プロコフィエフピアノ曲って、ペダルをあまり使わずゴツゴツしたダイナミクスでマシンのようにリズムを作るのが僕の好みなんだけど、このリサイタルの伴奏のおばさんは(ロシア人だけど)ちとペダルを使いすぎで、テンポが揺れすぎ。特に、伴奏としてだと、ヴァイオリンが詩的に歌う箇所がイマイチ映えないんだよね。この辺は単に好みの問題だけど。
嫁はこのところヴェンゲーロフに入れ込んでいる(?)らしく、リサイタル後はCDにサインをもらい、一緒に写真を撮って、握手していた。次は一緒に写った写真をプリントして、それにサインしてもらうらしい。